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久松睦典

グリーフケアとゲシュタルト療法~非公認の悲嘆~


日本ゲシュタルト療法学会第14回学術大会において研究発表を予定している白坂和美さんから、発表についてご紹介いただきました。


学術大会の詳細とお申し込みは、「第14回学術大会(オンライン)」のページをご覧ください。

基調講演、大会長講演および研究発表の一部はアーカイブ視聴も可能です。



白坂和美(GNK/ゲシュタルトネットワーク関西)


"グリーフとは「悲嘆感情」のことである。私たちは日々何かを喪失している。イヤリン

グを落としたとか,代謝の範囲で日々の髪の毛が抜け落ちる,木の葉が落ちるなどであ

る。そのような喪失はショックな場合もあるが、品物であれば新しく購入したり,代謝の

問題であれば循環的な日常の出来事として捉えたりしていることがあると考える。

ここで言うグリーフ(悲嘆)とは,死別によっておこる喪失体験,悲嘆感情のことを言

う。まず悲嘆ケアの整理のために三つの用語を示しておきたい。日本では遺族のケアは

「グリーフ(悲嘆)ケア」という用語が一般的であるが,それは死別に限らず広い意味の

喪失で使われる。死別悲嘆の援助に対し「悲嘆カウンセリング」と「悲嘆セラピー」とい

う用語がある。Worden は ,「『悲嘆カウンセリング』は複雑でない , つまり通常の悲嘆に

対して,適度な時間経過の範囲内で,喪の課題を消化しながら健康な適応が成しとげられ

るように悲嘆の過程を促進していく。他方,『悲嘆セラピー』と呼ぶ場合は,複雑なモー

ニング(服喪), つまり通常の範囲を超えた悲嘆反応を示す人たちを援助する目的」と述べ

ている(Worden, 2018/2022, p. 87)。

今回は複雑なモーニング(服喪)の中でも自死遺族に焦点をあてる。自死遺族に焦点を

当てる目的は,題目に記載している「非公認の悲嘆」であり,スティグマ(偏見)により

社会的に表現しにくい悲嘆であり一人で苦しんでいるケースが多いと考えられる。グルー

プで安心してそのことを語り社会との接点がとれ「公認された」悲嘆となり,悲嘆を表現

し亡き人と新たなつながりを持ち,思い出を語れるようになり,「今-ここ」の自分の人生

を生きることができるようになるということを目的としている。

また,発表者である筆者自身も自死遺族であり,当事者としてゲシュタルト療法によって

悲嘆と向き合い,その後,ファシリテーター(以下,Faと記す)として,自死遺族のクラ

イエント(以下,Clと記す)とワークを行い,ここでもまた,Clと共に悲嘆感情と共にい

ることをしながら,自分らしい人生を歩むきっかけとなったことを今回の発表で報告をし

たいと思う。"



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