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研究会報告:「今・ここ」で起きるトラウマからの回復〜ゲシュタルト療法との接点〜(白川美也子先生)

講師:白川美也子


2026年2月26日(木)Zoom


精神科医・心理士として、そして当事者としての視点を併せ持つ白川先生が語る言葉には、臨床の現場でトラウマという極限条件に向き合ってきた重みが宿っています 。先生の真摯な歩みに対し、改めて深い敬意を表します。


今回の学びで特に印象深かったのは、トラウマ治療における「今・ここ」の特殊性と、その成立条件です 。トラウマ体験は、まるで冷凍保存されたかのように身体の中でフレッシュな状態で残り続けています。ゲシュタルト療法で「フローズンファイアー(凍れる炎)」と呼ばれるこの状態を「今・ここ」で扱う際、体験の「前景化」や「未完了の完了」を目指しつつも、トラウマ治療においては「前景化の調整(滴定)」や「崩壊の予防」といった、安全を最優先した繊細なアプローチが不可欠であることを学びました 。


特に、最後に行われた「二つの手」のミニワークでの気づきは、私にとってゲシュタルトの哲学である、クライアントとの関係性「我ー汝」を今一度、確認できるものでした。。

一方の手を引き剥がそうと「引き剥がしてやる」という「治してあげる」立場で関わると、受ける側は「ファイト(抵抗)」の立場になり、身体が硬くなってしまいます。しかし、「ご一緒に」と声をかけ合うことで、手が柔らかく動いたその変化に驚きました。


これは、白川先生が強調された「治療者とクライエントという立場をとらない」「我ー汝の関係性」が、いかにクライアントの安全を確保し、治療的な接触を可能にするかを物語っていました 。

私自身も一人の当事者としてこの場に身を置いていましたが、誰もが、何らかの痛みを抱えている当事者であると感じます。そうした中で、自分自身への気づきを得ていくことで、癒しと成長をもたらすのだと実感しています 。かつて言えなかった「嫌だ」「やめて」を言葉だけではなく、ソマティック(身体的)に表現し、あるいは椅子を押し返すといったワークも、この「ご一緒に」という安全な基盤があって初めて、回復へのプロセスとなるのだと痛感しました 。


講義の終わり、会場全体が非常に温かな空気に包まれたことが心に残っています。トラウマという困難なテーマを扱いながらも、最後には希望と安らぎが共有されたその空間こそが、まさに「今・ここ」における癒しの原点であると感じます。


このような素晴らしい学びの機会をいただけたことに、心より感謝申し上げます。



 
 
 

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